未だ見ぬ平安に立ち会う

本企画は、2025年3月28日にミャンマー中部ザガイン(Sagaing)地域で発生したマグニチュード7.7の大地震により、
寺院や仏塔が崩壊した被災地への「心の復興」と「鎮魂」を目的として、現地で医療・人道支援活動を続ける
Barefoot Doctors Group 林健太郎医師から、「失われた祈りを再び形にしたい」との提案を受け、
鎌倉高徳院の協力のもと、アーティスト umi.doodle(うみ) が制作を担当しました。
umi.doodleは、“祈り”と“癒し”を主題とした作品制作を継続しており、その一環として、満月の下で僧侶と共に梵字を描く「BONJI」シリーズを展開しています。
これまでの活動が「失われた祈りを再び形にする」という本企画の趣旨と合致し、鎌倉・高徳院における奉納絵の制作を担当しました。

林医師の協力により、地震で崩壊したザガイン・ジャパンパゴダの瓦礫が日本へ届けられました。
その破片を顔料として用い、umi.doodle は鎌倉大仏の前で『鎌倉大仏の梵字仏』を描き、奉納いたしました。

崩壊した聖地の破片を“平和の象徴”として昇華させる本作品は、宗教や国境を越えた祈りの連帯を表すものであり、
戦後80年という節目に、平和の尊さを次世代へ伝えます。

世界各地で紛争や災禍が続く今、平和への願いを込めて建立された鎌倉大仏(高徳院)を舞台に、ミャンマーの寺院復興と世界平和への祈りを捧げます。

祈りの破片を受け取って

2025年3月28日、ミャンマー中部ザガイン(Sagaing)地域を震源とするマグニチュード7.7の大地震が発生しました。
震源地ザガインヒルには、第二次世界大戦のインパール作戦で命を落とした日本兵の慰霊のため建立された仏塔「ジャパンパゴダ」が存在します 。
このジャパンパゴダも地震により崩壊し、戦争と平和、宗教と歴史が交差するこの場所の平和への祈りの場が失われる事態となっています 。

長引く内戦の最前線で起きたこの災害は、3,500人が犠牲となる深刻な複合災害となりました。
特に震源地に近いザガイン市では2,500人が死亡。
その多くは僧侶や尼僧、そして内戦を逃れて僧院に避難していた人々でした。

ミャンマー大地震のため崩壊した、ジャパンパゴタ。
首が落ちてしまった痛々しい仏像

ザガインヒルでは、多くの仏塔や僧院が倒壊し、僧侶や避難民が犠牲となりました。
長く続いてきた祈りの音が途絶え、人々の心の拠り所が深く傷つきました。
それでも、誰かの祈りは消えることなく、静かに受け継がれています。
その想いを再び形にするために、私たちは“奉納”という方法を選びました。

さらに、マンダレイとザガインを結ぶ橋梁の崩落により、
支援の手も思うように届かない日々が続きました。
それでも、人々は瓦礫のそばで祈りを続けています。

地震のため、崩れ落ちたアヴァ橋(インワ橋)

僧院に避難していた内戦避難民は、僧院の崩壊により内戦からの仮住まいも失い、二重の困難の中で生きる術を探しています 。
現在でも、まだ復旧は続いており、特に飲料水を含む「水」と「医療サービス」が著しく不足しています。

ザガインヒルのジャパンパゴダの瓦礫から創られた画材

ジャパンパゴダ及び日本人慰霊碑が建立されている場所にて、日本人慰霊碑の欠片を手に石碑の前に立つ林健太郎さん

現地にて人道支援活動を続けるBarefoot Doctors Group 林健太郎医師の協力を得、地震で崩れたザガイン僧院(仏塔)の一つ、ジャパンパゴダの破片を分けていただきました。

ジャパンパゴダは今も祈りの場として大切に守られ、戦争の記憶と平和への願いを静かに伝え続けています。

瓦礫の破片は、平和祈願アートの最終仕上げとして謹んで破片を用いて制作いたしました。
平和と安寧への祈りを込め、内戦および災禍で命を落とされた方々の御霊の鎮魂を願い、この行為がせめてもの供養となることを心より祈念いたします。

ネパールのアウンザブタイヤ寺院で。林健太郎さん(左から4人目)と現地メンバー

タイトル:
絵の中央には「光」を象徴する白馬が描かれ、足元には瓦礫の粉から生まれた土の色。
空には、国境も宗教も超えた祈りが浮かび上がる。umi.doodle の筆が描くのは、痛みの先にある“希望のかたち”。

メッセージ

高徳院 佐藤住職よりコメント(祈り・奉納の意義)
協力者(文星芸術大学、大橋教授など)から技術・思想的なコメント
umi.doodle本人メッセージ(制作を通して感じたもの)

これからの展開

本奉納を起点として、祈りは静かに広がりを続けます。
作品を通じて、人々がそれぞれの場所で平和を想い、手を合わせる契機となることを願っております。

今後は、奉納作品の記録・展示を通じ、平和への祈りを次世代へと継承してまいります。
また、ミャンマーの寺院復興支援に関わる活動を継続し、
この祈りが再生と希望の光として実を結ぶことを、心より祈念いたします。

本企画にて制作した絵画は、鎌倉・高徳院において、11月5日より1か月間の予定で公開いたします。
屋外での展示となるため、天候その他の状況により、展示期間を短縮させていただく場合がございます。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

End credits

アシン ティローカ 尊者
アシン オバーサ 尊者
アシン マニジョウーターランカーラ 尊者
桑門 瑛光
柿田 京子
齋藤 直樹
齋藤 紘子
齋藤 美桜
橋本 眞利
Saw Yu Nandar
ShweYinMinOo
Daw Aye Thida
Mya Sakura
川上 寛尚
林 健太郎
林 彰子
山崎

絵画制作:umi.
技術協力:文星芸術大学
展示協力:神野道明
撮影・記録:NHK宇都宮局・丸山 裕樹
協力:鎌倉高徳院
企画・広報:soranoie llc

主催:Barefoot Doctors Group

special thanks

柴田聡
小野口貴士
金子悠次郎
神野道明
金井颯汰
加藤葵
金子翔一郎
佐々木皓宇

参考リンク

>>日本遺産ポータルサイト 世界平和パゴダ