2023年6月、日光山 輪王寺 常行堂で制作された『孔雀の花』制作様子は
こちら>>【umi.】「孔雀を求めて」世界遺産 日光山 輪王寺 ――修行堂での制作

常行堂(重要文化財)に籠って

「動植物画家として、孔雀を求め、ここ(=常行堂)にたどり着きました」。常行堂は、世界遺産である日光山輪王寺の中にある重要文化財のお堂。今回、特別に許可を得て、お堂の中で制作をー。日本で唯一つとなる「宝冠阿弥陀如来像」を観想しながら制作した様子を記す。<記事=野澤>

堂内には5羽の孔雀の上に阿弥陀如来と四菩薩の像が安置

制作に至った経緯は、俳優・宝田明との最期の会話から。昨年の3月初旬、宝田明氏が主演となる映画のお披露目会のために控室に。彼と絵の仕事の打合せの筈だったが、世間話に花が咲いていた。この数日後、彼は他界。「輪王寺での撮影の話をずっとしてくれたんです。宝田さんは名も知らないような私に絵の仕事をくれた恩人で。とても温かい人で、ショックが大きくて、それでどうしても気になっていて。

温かくなってから輪王寺に行ってみたんです。孔雀のことは実はその時に知って。孔雀は子どもの頃からずっと描いているモチーフだから、常行堂の孔雀さんも描いてみたいって思いました。常行堂の孔雀は仏教的な意味合いを沢山背負っているので資料の読み込みは時間を掛けました。曼荼羅の勉強会も連日行ってみたり、取り掛かりまでに準備で一か月くらい掛かりました」

執着しない制作スタイル

umi.は、母親の影響で美術学科の高校で沖縄の伝統工芸・紅型染めの美しさに感銘を受け、地元の芸術学部で染織専攻を修了。以降、動植物を彩った”天国へ向かう魂の解放図”や少女の絵を制作。

2016年の作品『banbi』

都内での美術展入賞等をきっかけに、より自由な作品創りを研究し、作風は様々となっていった。故に自身を「doodle(=いたずら描き)」とも称している。基本的にはアクリルをベースとした、工芸の友禅染めやネイルの技術を利用したミックスアートを主なスタイルとしている。

左から『ひとやすみ』、『シャリのアルパカ』、『SPOOKY-morning roar-』

動植物への強い関心や絵の道は、すべては母の影響であり、身近なものから得たものがそのままumi.の生き方や作品や活動に活きている。umi.の普段の生活が全て絵の着想となり、彼女の中でとてもいい加減に広がっていく。息を吸うように生み出されてくる彼女の世界を垣間見るとつい吹き出してしまう人も多い。

一筋縄ではいかなかった制作

お堂入りしてから、孔雀作品の制作作業は丸一週間以上続けられた。「気取りがあったのだと思う」制作から数日後、制作中の絵に描かれた孔雀たちの目を潰し始めた。「ごめんね」と呟きながら埋め込まれていく孔雀たち。制作中は仮眠を少し取る程度、疲労困憊の中、それでもキャンバスは新しいものに変えて挑んだ。

輪王寺の 鈴木常元 教化部長と

「"神様仏様というのは、少しだけ意地悪なんですよね"と輪王寺の方が微笑みながら話しかけてくれて、それが救いになりました。描き上げることばかりに目がいっていて、過程を無視していたことに気が付いて、順番通りにやろうって」

強い力に惹かれて、

umi.「動植物画家として、おそらく生涯追い求めるモチーフの一つが"孔雀"です。阿弥陀如来の化身とも云われる孔雀への興味の先で出会ったのは"修行道"でした。 常行堂は「常行三昧」という厳しい修行のために回廊型の造りとなり、無数に立ち並ぶ御位牌に無限にお経が唱えられてきました。その中で長時間の間、仏様と向き合い閃きをいただきました。いつもそうですが、これって思って取り組んでも何か強い力に引っ張られて異なるところに着地します。でも、これも縁なんだと思います」

photo by UGAJIN

umi.「孔雀、宝冠阿弥陀如来、常行堂、それは全て混ざり合い、形がほぐれていきました。どこまでも真っ直ぐ続く修行の道、その先の無量光を目指し、歩く、続く、無限の道、それらが私には、壮麗な「花」に見えました。」

【道 】"アクリル画"による仏教画

『孔雀の花』は修行をテーマにしました。カラス(煩悩)が溢れてしまう中、我が道を歩む大切さを考えてみました。作法や修行、その場にいる仏様に伺いを立てながら描く、アクリル画による現代向けな『教えの絵』としてーーー



>>NHK特集はこちら「 動植物画家umi.輪王寺新作制作に密着」

「回廊をイメージしていたのになぜか真っすぐな道が見えて、このような形になりました」

2023年7月3日から、栃木県日光市の「杉並木公園ギャラリー」で、この『孔雀の花』と、6月18日に宇都宮駅前ライブペイントで制作した『願いの花』が公開。展示会を決めたのは開催の四日前。会期も6日間という慌ただしさではあったが、900人弱の来場者が詰め寄った。

umi. 作品お披露目会『ネガイフル〜二つの花〜』
会場:日光市 杉並公園ギャラリー
会期:2023年7月3日(月)~7月8日(土)
開館時間:10:00~18:00
団体は要予約
※作家在廊時間はLINE公式より(こちらよりご登録いただけます)

こんな私にさえ、

umi.「近年、寺離れという言葉を耳にするようになりました。文明や文化の目覚ましい変化によって、人から人に伝える手段が異なってきたことが理由の一つなのかもと思いました。

『孔雀の花』M80 photo by Takako Kawamura

私は仏師とは程遠い存在ですが、諸々のきっかけを通り、仏様の教えに触れる機会が多いです。当然、作品制作にもその影響はあります。「仏画めいたものを描きたい」というなんとなくの思いから今に至ることを正直に申し上げながら、真剣に取り組んでいることもお伝えしたく存じます。

『願いの花』ライブペイント「月染め」新月の瞬間から人々の前で描いた願いの絵 / M80+M80

なぜなら、こんな若輩者の私にさえ、仏様の教えは尊いことが分かり、生活にぴんと律を設けてくれるからです。作品を通して、仏様の教えに興味を持つ方が増えたら良いなと今は切に願っています。

photo by Takako Kawamura

変えてはいけないものは変えず、

仏様の教えを説くにあたり、中国の墨絵や日本画というジャンルの絵画作品や、木彫り品によって仏画仏像が制作されて、教えを伝える手掛かりとなってきました。文明発展により変わったり増えた新しい媒体、例えば動画やテレビ、映画、スマホなどの電子機器など、それらは一般の人の目や耳には簡単に入り込み、古来の形のまま存在する仏画や仏像は有り難さは変わらない一方で、何処か遠い存在になってしまったのではないでしょうか。 私は、仏様の声を届かせるための手段が変わって来た事実を受け入れ、アクリル画という近年の画法を使い、仏画を描いてみることにしました。 梵字も勉強してみました。大正大学の先生方に特別に講義までしていただきました。 お修行やお作法の勉強をさせていただきながら、月の満ち欠けの時刻をきっかけとして、魂達が何処へ行こうとしているのか、探ろうとしました。

変えてはいけないものは変えず、変わってよいものは今に合わせて変えていく。不易流行の考えをもとに、私が子供の頃から描き続けてきたファンタジー絵の極みとして、新仏画に挑戦していきます」。/ umi.

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下野新聞「SOON」日光で願いのテーマ作品展
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日経新聞・オンライン"人物ファイル"「表現する喜びを子ども達とともに」
Yahoo!ニュース「難病・表皮水疱症の支援シャツ販売」
読売新聞・オンライン

umi.公式サイト

NHK特集 umi輪王寺制作について

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